Programs / 最終更新時間:2005年09月22日 12時32分03秒

ゲームソフトの企画から完成まで

ゲームはいかにして作られるのか? 企画から開発、発表までの過程、できあがっていく様子をざっと紹介します。例とするのは昔(1997年)学校で卒業制作として作成したもの[1]。プロ(?)とアマの違いも交えて、楽しいゲーム作りについて考えてみたいと思います。

  • [1]このゲームはプログラマ3人、デザイナー1人、サウンド1人で開発しました。

目次

企画準備

作りたいものはいつでもたくさん思い浮かびます。そのなかからどれを選び、どうゲームとして落とし込むかが一番難しいポイント。

当時、色々期待して専門学校に入ったものの、前年度の卒業制作発表会で見たものがどうもピンとこず、自分たちはもっとゲーム内容に新しさがあって、ステージなどにもバリエーションがあるものを作りたいと、考えていました。

素案をまとめる

企画内容を紙ペラ一枚にまとめます。これは実際に企画内容として提出したものですが、わざわざ内容がよく分からないように抑えたりしてます――というのも発表会の場で明かすまでは内容をできるだけ伏せておきたかったから。

 ハイスピード無重力アクション(仮)

[ゲームの概要]

 ハイスピードで3D空間を飛び、巨大な敵を殴るゲーム。
 敵は、基本的に各ステージに一体。

[売り]

 突き抜けるスピード。
 破壊しまくる壮快感。

[ターゲット]

 ストレス溜まっている人。
 アメリカ人。

[ルール]

 エネルギーは180ポイントあり、1秒に1ポイントずつ減少。
 敵の攻撃を受けても減少。
 0になるとゲームオーバー。
 敵を倒すとクリア。次のステージへ。

[コントローラー]

     上旋回
      ↑
 左旋回 ← → 右旋回
      ↓
     下旋回

 ボタン押しっぱなし‥‥加速
 ボタンを離す‥‥‥‥‥パンチ(スカルパンチ)

[ゲームの進み方]

 敵がいるので殴る→敵が吹っ飛ぶ→加速して追いかける→バトル
 ※当たった障害物は次々に吹っ飛び、“J”(主人公)は減速しない。

パンチ(スカルパンチ)……。よい例ではないですが、気にしない気にしない。

実際の開発時にはA4レポート用紙10〜15枚くらいの手書きの企画書がありました。

ちなみにプロの制作でも最初は簡単な企画書からはじめたりします[2]

  • [2]ただプロの企画でも、体裁だけ綺麗で、一番重要なコンセプト、やりたいことが欠けていたり、センスが欠如していることも――もちろんあります。

どんな企画がよいか?

企画を考えるときに必須なのは「自分や自分のまわりの誰かがやりたいと思うもの」です。それは違う、と言う方もいるでしょう。が、個人的にはこれが最も重要な基本原則だと思っています。誰か分からない人ではなく、イメージがわく人を対象にしてはじめて、その企画で何が重要で何が重要でないのか判断できる、と。[3]

  • [3]ただし、その対象となるタイプが全国的にレアだと、ゲームに興味を持つ人もレアになりがちなのでその点は注意。

自分や、自分のまわりの誰もが欲しくないゲームを、熱意をもって作れる人がどれだけいるでしょう。熱意がないのに人に訴えかけられるものを作れる人がどれだけいるでしょう。訴えかけるものがないのに買われて、楽しまれ、広まっていくゲームがどれだけあるでしょう。

でも意外と、自分も他人もあまりほしがらないと分かっていて開発を行っているプロジェクトがあったりします。なぜか。それは資金を出す人はそうは思っていないからです。このギャップには理由があるのですが、それはいずれまた。

なにはともあれ、企画に迷ったときはこの原則に立ち返るとよい、です。

チームメンバーを集める

開発を行うには同じ志を持つチームメンバーが必要です。というわけで、ゲーム内容のプレゼンを行ってのメンバー募集へ。この時点ではたしかプログラマー1名、デザイナー1名だけでした。

最初はホワイトボードと言葉で伝えようと練習してみたものの、どうもイメージが伝わりにくいというので、ビデオカメラで実写のチープな映像を作ってニュアンスを伝えることにしました。

企画プレゼンムービー

実際にはムービー中、無音のところで以下のようなことをしゃべったり、しゃべらなかったりします。[4]

「このゲームはハイスピード無重力アクションです」

「この無重力というのは、ま、主人公が浮いてるってことですね。
 ひとことでこのゲームを言うなら、“ハイスピード”で“3D空間を飛び”、
“敵を殴る”ゲームです。
 敵は、基本的に各ステージに一体です。」

「売りは、突き抜けるスピードと破壊しまくる壮快感」

「主人公は3D空間を自由に飛び回り、右手の特殊グローブを使って
 敵を殴りつけます。
 主人公はどんどん加速し、吹っ飛んでいる敵の反撃をかわして加速を続け、
 その懐でパンチを放ちます。
 それをくらった敵は、スピードを増してもっと先へと吹き飛んでいきます」

「敵や主人公がビルなどの障害物に当たっても、スピードが落ちたりしません。
 ビルは次々に吹っ飛び、木っ端微塵になります」

「ゲームの内容はだいたいこんな感じです。
 ルールは、一定時間内にボスを倒せば次のステージに行けるというもの。
 あと、この時間は主人公の体力でもあり、
 敵からダメージを受けると減ってしまいます。」

「ハイスピード無重力アクション」
  • [4]ムービー中の曲は、当時リラックスして気分よく飛んでる感じの曲でしたが、今回ネット公開用にCCライセンスの曲に変更してあります。曲はSpunky Funk(Words by Lisa Rein、 Music by Lisa Rein and Ron Taylor)です。

なかなかバカなムービーです。けれど、全部頭で、あるいはCGやコンテで考えるのではなく、実写でやると色々気づくことも多くて思わぬ収穫があったりします[5]。作ってて面白いし。一度お試しあれ。

  • [5]ゲームを作るとどうしても今までのゲームの画面が頭をよぎり、それを実装しようとします。でも、実写で撮ると普通のゲームにはなかった動き――カメラに対する主人公の位置や動きとか――を発見できたり、仕様書を見せるよりゲームのコンセプトや目指す方向を「感じ取れる」ので意思の疎通がスムーズになったりとか、よいことがあります。ただ……作ってる姿は恥ずかしい。

このプレゼン後、志を同じくするメンバー2名がめでたくチームに加わりました。

プランニングは原案を出した人(デザイナー)が主軸となり、他メンバーと意見を交換して進めていきます。[6]

  • [6]キャラクターがどこかで見たアーティストに似ているのはそのときの趣味です。

ゲーム会社の企画プレゼン

プロの場合も企画のプレゼンはよく行われます、ただオリジナルでなく移植の場合には省略されることもあるようです。メンバーの募集のため、というより企画の良し悪しの判断のために行うのが一般的です。

プレゼンのときに大事なのは小手先の技術や体裁ではなく、言いたいことを絞ってそこに魂と自信を込めて行うこと、相手のことを考えること(自分が聞いたら興味を持つか? 自分に資金があったら出したいと思うか? そもそもプレゼンすべきタイミングか?)、でしょうか。

説明のポイントは「こんなゲームです」ではなく、なぜこんなゲームなのか、そうしたのはなぜなのか、理由を言うこと。いくら練った企画でも結果だけの説明では伝わりません。

あと地味だけど、プレゼンの練習や資料の下準備も大事です。社内の人、社外の人を含め、親切心で言ってくれる意見はよく聞いて、「自分がよいと思った点だけ」を取り入れること。ここ大事です。自分がよいと思わない内容を「まあいいか」と取り込むと、悔いが残ることになります。それでは自分の責任感も薄れるし、自分がベストと思うことを自分の責任でやりましょう。

チームの編成については、こんなふうにタイトルごとにメンバーを募集するケースもあれば、募集というより上司が空き人員を集めて組織したり、あらかじめチームが決まっていてそこにゲーム企画が割り当てられたり、といろいろです。

モチベーションを高く保つことやチームのセンスの統一という意味で、タイトルにあわせて「そのゲームを、あのメンバーと作りたい」というメンバーを募集するのは、なかなか楽しい方法です。

開発

企画書段階では売れる売れないはともかく、どんなゲームも面白くもなれば、つまらなくもなりえる、つまり面白さは未知数というのが実感としてあります。

開発序盤

そんなわけで開発が重要になってくるわけですが、開発序盤はゲームの基礎研究、ツール作成などを行いプロトタイプに向けての各種作業が必要に。

当時はゲーム開発の経験は薄かったので素直に学校教材の仮想ゲームマシン(PCで動くライブラリ)をターゲットに開発を行います。性能は……です。が、ゲームはハード性能ではない、ということで。

通常、開発の途中経過を報告するためには1st版、α版といったプログラム/データ一式を用意する(その後、評価会のようなもので映像を見せる場合もある)のですが、学校ではプレゼン映像としての発表でした。

開発序盤報告ムービー

今回は実写ではなく、ゲームの基礎研究画面と自作ツールの画面。出だしがもったいぶってます。[7]

  • [7]ムービー中の曲は、例によってネット公開用にCCライセンスの曲に変更してあります。Take2(Incidental Fusion)、Should I Let You In(Words by Lisa Rein、 Music by Lisa Rein and Ron Taylor)です。

いろいろ恥ずかしい…テクスチャ貼るツールなんてものから全部自作してたんですね。

ゲーム会社での序盤の開発

プロでもツールの自作は行いますが、出来るだけありものを使ったり、その後の開発で使いまわしたり、効率化を進めます。

平行して企画の細部をつめていく中で、プロトタイプ(試作版)を遊んで企画にフィードバックしたり、企画の変更をまたプロトタイプに反映させたり、大規模な実験をやるのに最適な時期です。

実はこの時期が開発終盤と同じくらい重要だったりする――のですが、軽んじられることが多く、この間にいろんな作業をマルチタスクで進めるなんてこともプロではありがちだとか。この期間は少人数でもいいので長くとりたいところです。

また、コンセプトを見失わないことが大切です。そのコンセプトを活かすためには、当初のアイデアや要望にこだわりすぎず、柔軟に考えることがポイント。つまり、優先度でいうと「コンセプト<当初のアイデア」は本末転倒で、「コンセプト>当初のアイデア」という関係が理想です。そうすると、その後の開発をスムーズに進めることができます。

開発中盤

開発も中盤になってくると、いろいろと問題がでてきます。たとえば秒間20フレームで一画面に出せるポリゴン数が300〜500くらい、一度に使える色数は256色、画面解像度も低いという状況で、キャラとビル街をどう表現するか? とか。

卒業制作とはいえ、実際に発表会場で披露されるのは一部のみで、その選考に残らないと皆に見てもらえません。そんなわけで出場を賭けた報告プレゼンが始まります。

開発中盤報告ムービー

映像が出るまで少し間があります。だいぶゲームらしくなってきました。ステージにもバリエーションが。[8]

  • [8]ムービー中の曲は、例によってネット公開用にCCライセンスの曲に変更してあります。12 string funk(Incidental Fusion)です。なるべく当時と同じ雰囲気を再現しようとして選曲してます。

フィールドは無限大ですが、実は遠く(というほど遠くない)のビルは一枚絵だったりします。海ステージでは画面をラスタースクロールさせたり、最後のビル街ではモーションブラーをかけたり、いろいろ実験的なことも。

しかも学校で開発しているときは、わざとテクスチャをダミーのわけわからない画像にして開発していました。なので、このときはじめて他のステージを見た人も多く、いろいろ驚いてもらえました。

その結果、無事、発表の場に進めることに……!

ゲーム会社での中盤の開発

プロの場合も作品の出来がいまいちだったりすると、打ち切られることがあります。作品の出来以前の大人の事情でそうなることもありますが。

ダメダメだと言われながら何年も開発が続いて大赤字――かと思いきや実際完成にこぎつけ出したときには大ヒットというタイトルもあるので、プロも本当は何がうけるのか分かってないのかもしれません。

開発中盤ともなってくると、着々とモノができてくる場合と、内部処理だけがバージョンアップしていて目に見えるところはほとんど変わらない場合があり、後者の場合に不安を感じる人が多いようです。が、見た目ばかりやっていて内部処理が……というのも実は怖い。見た目と中身の両方をバランスよく進めるのが大事です。

発表

最後のゲーム調整、デバッグを一通り終え、ゲームは世に出て行きます。が、作るだけでなく、ゲーム雑誌に載せてもらったり、問屋向けに資料を用意したり、イベントを企画したりと、ユーザーに知ってもらうことも大事です。

いざお披露目

今回の例は卒業制作なので発表会の場でお披露目して、体験コーナーで遊んでもらって、その後CDを焼いて……という形になります。

しかし、順風満帆でたどり着けはしません。開発終盤になって、ようやく実感したのです。ゲーム作りの本当の難しさに。オリジナルの面白いゲームを作るのは簡単なことではないということに。

たとえば、昔8人同時対戦のクイズゲームを作ったときには、キーボードを8人が取り囲んでひとり1ボタンずつで操作できるようにする以外には、とくに工夫の必要はなく、ゲーム的な面白さを出すのは簡単でした。格闘ゲーム、シミュレーションゲームやRPGもどきを作るときも模倣とちょっとした変更であれば、出来るものはおおよそ想像通りのものに。

しかし、オリジナル色の強い企画を面白いゲームにするには一味違った工夫が必要なのです。

発表ムービー

荒削りですが、ダメージ表示や敵の出す弾、キャラクターの動きなどが追加され、ゲームになりました[9]

  • [9]ビデオと圧縮の関係で色と画質が悪くなってます。ムービー中の曲は、ゲームで実際に使用していたものです。音楽関係の専門学校に通っていた友人に突然頼んで、大急ぎで作ってもらった記憶があります。

今回も学校での開発中はわざとよく分からない画像にして開発していたので、このときはじめて各ステージの本当の姿を見た人も多かったです。評価点を付ける先生にさえステージ1以外は隠してたり:)[10]

  • [10]これも一種の広報戦略か。

ビルの大きさをより際立たせるためには、電柱や車、人といった小さな比較物を街に配置する――だけでなく、「主人公の飛ぶ高さによって画角を変える」といった処理をいれて対処しました。最終面ではボスキャラの顔をモーフィングさせたりも。

操作系では「(主人公を見つつその先に)敵を見るボタン」や「ダッシュ」ボタン、「パンチによるコンボ」などで、ゲームとして意味のある浮遊感や爽快感を出すよう工夫。

表示にはライフやダメージ、コンボやボーナス点に応じた「good」「wow!」「yes!!」といったバカっぽいメッセージを追加したり、面のバリエーションをさらに豊富にしたり、ボスキャラの動きが極真空手(蛸なのに)、ヒクソン・グレイシー(虫なのに)……といった遊びを入れています[11]

  • [11]ちなみにキャラクターのモーションは自作ツールによる手打ちです。参考のため、自分たちでパンチやスープレックスの動きをしてビデオに撮ったりも。

プレイアブル版ステージ1ムービー

当日のプレイアブル版は発表ムービーよりも進化していて、ビルが壊れるときに破片がハデに飛び散ったり、最終面でブラックフォールが出たりとかしてました。

登場しているビルのいくつかは今も吉祥寺で見ることができます。ゲームの中でバスが走ってたり、歩いている人物の中には開発者がいたりも。

結果

この日「もし結果が一位になったら、自分たちの方向は間違っていない。一位にならなかったら……間違っていたことを認めて、画像の綺麗さ優先、他の人と似たやり方、模倣や流行からも企画をするように考え直そう」みたいなことを生意気にも話し合っていたことを覚えています。

内容としては当初考えていた面白さを盛り込みきれたわけではなく、まだまだ手を入れないといけない点がありました。それでも自分たちのやりたいオリジナルをやろう、という方向で突っ走ったという点では悔いなし。

はたして、ゲームに込めた熱い思いや遊び心は、届いたでしょうか?

会場の全員がそれぞれ気に入った作品に投票し、集計します。緊張しながら待った結果は――グランプリ。そう、最優秀賞です!

ほかにそつなく出来たゲームがあったなか、一番に選んでもらえたのは、荒削りながら、なにか気になるものがあったからかもしれません。

ゲームとしては、「最終的に遊べるようにする」ということに集中しすぎて、終盤には疾走感の追求を忘れていた感がありました。そこらへんをもっと追求したかったです。

なにはともあれ、この結果には気をよくしました。調子に乗って突っ走り――すぎるのもアレですが、今の自分に足りないのはこういう思い切りの良さと、作ることを楽しむ遊び心かな、と。初心忘れるべからず

ゲーム会社でのゲーム発売後の話

一度作ったゲームはそれで終わり――かと思いきや、続編や多機種や海外版への移植、一部流用の話となりがち。旨い汁は無くなるまで搾り取れというわけで、そこそこヒットしたタイトルはそのタイトルがヒットしなくなるまで続けられる傾向があります。一番ヒットしたところで有終の美を飾るなんて発想はありません。

ゲーム会社は成功を望みますが、なにより失敗が怖いのです。まぁ、これはゲーム会社に限った話でもなく。また、開発者自身はいろんなチャレンジをしたいと考えていますが、失敗して給料がなくなると嫌で……というのは都合のよい話ですね。

そんなこんなでありきたりのタイトルが出続ければ、もちろん市場は縮小していきます。

なのでチャレンジは必要です。他社や他業界との競争のためにも、世の中に楽しい遊びを増やすためにも。

チャレンジするには、成功率を大幅に上げる(それにともない大成功率は低下していきがち)、失敗するリスクを減らす(それにともない成功率は低下していきがち)、規模を小さくしたりなどして失敗したときのダメージを減らす(よりアイデアの質が問われる)、起業するなりなんなりして失敗のリスクを全部自分が引き受ける(捨て身)、成功する事業を増やして失敗事業(でも大当たりの可能性あり)をまかなう(内部に不満が増えがち)、といった手があります。

せこいけど会社にパワーがあった場合にできる手としては「他者のチャレンジで成功したものに便乗」です(パワーがないと便乗で成功できても、大成功は難しい)。でも、個人的なおすすめは「規模を小さくして少数精鋭で開発すること」でしょうか。

全ゲームユーザーとゲーム開発者に幸あれ。